グリーンタフ露頭

およそ1300万年前の磐梯火山の基盤をなす地層が露出。この地域が海底だった証拠を示す貝化石や海底火山噴出物が見られる。

桧原湖北西岸の桧原集落から南西方の蘭峠(あららぎとうげ)を越え大塩峠に到る道路沿いには、中新世前期後半~中期初め(1400万~1800万年前)の地層である桧原層と五枚沢川層が露出している。
桧原層は礫岩(れきがん)・砂岩・泥岩からなり、桧原集落周辺から多くの植物の葉の化石が得られている。その中にはコンプトニアという台島型(だいじまがた)植物群に多産する植物の葉の化石が見つかっている。
その上位に重なる五枚沢川層は、海底火山の噴出物である緑色の凝灰岩(火山灰が固まった岩石)を主とし砂岩を挟む。蘭峠付近に分布する砂岩からはホタテガイの仲間であるキムラホタテの化石が見つかっている。

蘭峠の南西方約300mの小塩川沿いおよびその支流沿いに、緑色をした五枚沢川層の岩石が露出している。
この時代に東北地方日本海側には膨大な量の海底火山による噴出物が堆積した。これらは緑色(グリーン)をした凝灰岩(タフ)であることから、グリーンタフと呼ばれている。
小塩川沿いでみられるグリーンタフは、緑色と白色のまだら状の外観をもっている。緑色を示すのは、岩石に含まれる輝石や角閃石(かくせんせき)などの鉱物が熱水で変質して緑泥石という粘土鉱物に変化しているためである。白い部分は軽石で、噴火の際マグマが発泡して生じたものである。この岩石の中には、金白色の大粒で四角い黄鉄鉱の結晶がしばしば含まれる。黄鉄鉱は鉄と硫黄の化合物が結晶したもので、海底火山活動に伴って生じる熱水から沈殿して形成されたものと考えられる。

五枚沢川層の分布域の南方に、五枚沢川層を覆って中新世中期の海成層である二ノ沢層が堆積した。二ノ沢層の堆積が終了したおよそ1000万年前以降、この地域に海成の地層は見られない。その後、鮮新世の400万~500万年前に、陸上火山による火砕流堆積物である高曽根山石英安山岩質溶結凝灰岩が、中新世の地層を覆って堆積した。
つまり、1000万年前以降進んだ海水面の低下と地盤の隆起により、それまで海域だったこの地域が陸域になり、陸上火山による火山活動が始まったわけである。この隆起運動により現在の奥羽山脈の原型がつくられた。その隆起した地域に、100万年前以降にマグマが噴出して猫魔火山が誕生しその後磐梯火山が形成された。