磐梯山の生い立ち

磐梯火山は、主峰である大磐梯(標高1816m)、櫛ヶ峰(くしがみね・1636m)、赤埴山(あかはにやま・1430m)の三つの山体からなる成層火山である(写真1)。

東方から見た磐梯山(写真1)東方から見た磐梯山

磐梯山の誕生した時期ははっきり分かっていないが、1888年の噴火の際生じた爆裂カルデラ壁の下部に、およそ70万年前を示す溶岩が露出しているので、その頃には火山活動を開始していたと考えられる。

磐梯山は大きく分けて古磐梯火山と新磐梯火山という新旧二つの時期に形成された火山体から成っている(図1)。

古磐梯火山はかつて大きな山容を誇っていたと推定されるが、現在は櫛ヶ峰や赤埴山がその一部として残っている。古磐梯火山が約4万年前に噴火により大規模な山体崩壊(※1)をした後、その爆裂カルデラ内にマグマが噴出し、現在の主峰である大磐梯と小磐梯(推定標高1750m)を中心とする山体(新磐梯火山)が誕生した。 1888年の噴火では小磐梯が崩壊し、現在見られる北方に開いた大きな爆裂カルデラが形成された。

※1 山体崩壊・・・大規模火山などの脆弱な地質の山体の一部が、地震動や噴火などで大規模な崩壊を起こす現象。

磐梯山の地質図(図1)磐梯山の地質図 千葉・木村(2001)作成の図を簡略化
猪苗代中央エリアの地形と地質

磐梯火山は、主峰である大磐梯(おおばんだい・標高1,816m)、櫛ヶ峰(くしがみね・1,636m)、赤埴山(あかはにやま・1,430m)の三つの山体からなる成層火山であり、それらに取り囲まれて中央に径約1kmの沼ノ平の凹地(標高約1,400m)がある。かつては大磐梯のすぐ北側に小磐梯(推定標高約1,750m)の山体があったが、1888年の噴火で崩壊して失われた。

磐梯火山は古磐梯火山と新磐梯火山の新旧二つの火山体、さらにこれより古い先磐梯火山と呼ばれる山体から成っている(図1)。先磐梯火山の山体は、磐梯火山の最初の活動で形成されたと考えられているが、1888年の爆裂カルデラ壁の下部に露出しているのみであり、その年代はおよそ70万年前である。古磐梯火山はかつて大きな山容を誇っていたと推定されるが、現在は櫛ヶ峰や赤埴山がその一部として残っている。新磐梯火山は、現在の主峰である大磐梯と崩壊した小磐梯で構成されている。古磐梯火山は約4万年前の翁島岩なだれ(※2)、新磐梯火山は1888年の岩なだれなど、いずれも山体形成後に大崩壊を起こしている。

猪苗代中央エリアは、古磐梯火山の一部である赤埴山の山麓部に位置する。赤埴山を造っている岩体は、下部は厚い溶岩が発達し、上部はスコリア(※3)や火山弾を含む火山灰層で覆われている。これら赤埴山の火山噴出物の年代は20万~40万年前とされている。猪苗代の市街地は、火山麓に発達する扇状地や、河川の氾濫原などからなる低地上に立地している。

※2 岩なだれ・・・大規模かつ高速で起こる山体の崩壊現象。火砕流や泥流とは異なり、破壊された大小の岩が、マグマ物質を含まず、水もほとんど含まない状態で流れ下る。岩なだれの堆積地域では、起伏のある丘陵(流れ山)が形成される。岩屑(がんせつ)なだれとも言う。
※3 山体崩壊・・・大規模火山などの脆弱な地質の山体の一部が、地震動や噴火などで大規模な崩壊を起こす現象。

磐梯火山南西麓エリアの地形と地質

磐梯火山南西麓エリアは、北に厩嶽山(うまやさん)・古城ヶ峰・猫魔ヶ岳など猫魔火山の活動により形成された山々、中央に大谷川に沿った低地帯、そして南に磐梯火山の岩なだれにより生じた流れ山地形が広がっている(図2)。

猫魔火山は今からおよそ100万年前に活動を開始した火山で、東側にある磐梯山と同じ安山岩質のマグマの噴出により山体が成長し、約40万年前にはその活動を終えた。山体の南麓斜面には扇状地が広がり、慧日寺跡(えにちじあと)もその地形の上に立地している。

大谷川は、猫魔火山や磐梯火山から流れ下る支流を集め、西方に流れ、日橋川と合流し会津盆地に流れ込む川で、川の南北両側に河岸段丘を形成している。磐梯町の中心市街地の北半分はこの段丘面上に立地している。

このエリア南部には、お椀を伏せたような丸い形をした丘陵がたくさん見られ、それは「流れ山」と呼ばれている。この流れ山は、今からおよそ3~5万年前に磐梯山の噴火により生じた「岩なだれ」によって誕生した地形である。JR磐越西線はこの流れ山の間を縫うように走っている。

磐梯火山南麓~南西麓の地質図(図2)磐梯火山南麓~南西麓の地質図(鈴木・真鍋(1988)をもとに作成)
磐梯山・猪苗代湖周辺の地質

磐梯山と猪苗代湖周辺の地質には、古生代から新生代にかけての数億年にわたる地殻変動の跡が記録されている(図3)。

磐梯山と猪苗代湖の東側には川桁(かわげた)断層という南北に延びる断層がある。断層の東側は川桁山地で、主に花崗岩類と変成岩類(図の赤色)から構成されている。花崗岩類はマグマが地下深いところでゆっくり冷え固まってできたゴマシオ状の外観をもつ岩石で、恐竜時代である中生代白亜紀(約1億年前)に形成された。変成岩は高い圧力のもとで造られたしま模様の岩石で、その年代は古く古生代の可能性がある。

猪苗代湖の湖岸の丘陵地帯には、約1500万年前のウニの化石や海底火山活動により噴出した火山灰からなる岩石(図の緑色)がある。当時会津地域は海底にあったことが分かる。

約150万年前に起こった陸上火山による大規模な火砕流により、背炙山(せあぶりやま)や会津布引山(ぬのびきやま)など山頂部の平坦な丘陵が形成された(図の橙色)。

約100万年前には猫魔火山(図の桃色)が、それに続いて70万年前には磐梯火山の活動が始まり山体を成長させた(図の紫色)。磐梯火山は山体崩壊をくり返し、約3~5万年前には南西麓に、1888(明治21)年には北麓の裏磐梯方面に岩なだれが発生し土石を堆積させた(図の黄色)。

磐梯山と猪苗代湖周辺の地質図(図3)磐梯山と猪苗代湖周辺の地質図(鈴木・眞鍋(1988)をもとに作成)